馬頭琴
日本人には「スーホの白い馬」で知られる馬頭琴は、モンゴルを代表する民族楽器だ。モンゴル語では「モリン・ホール」と呼ぶが、省略してホールと呼んだり、「イケル」と呼んだりすることもある。馬頭琴には、3通りの調弦法と4種類の演奏法がある。馬頭琴は、バイオリンやチェロのように弓を使って演奏する。その美しい音色から、「草原のチェロ」と形容されることもある。
日本人には「スーホの白い馬」で知られる馬頭琴は、モンゴルを代表する民族楽器だ。モンゴル語では「モリン・ホール」と呼ぶが、省略してホールと呼んだり、「イケル」と呼んだりすることもある。馬頭琴には、3通りの調弦法と4種類の演奏法がある。馬頭琴は、バイオリンやチェロのように弓を使って演奏する。その美しい音色から、「草原のチェロ」と形容されることもある。
馬頭琴の歴史は古く、2000年以上前から存在したと言われる。「元朝秘史」、「アルタン・トプチ」、「元史」、「清史」などの歴史書にホールについての記述があり、これらは全て馬頭琴と同じ系統の楽器だ。歴史的な要因により、馬頭琴は何度も絶滅の危機に瀕してきた。現在馬頭琴が隆盛を極めているのは、20世紀にジャミアンさんという偉大な馬頭琴演奏者が現れたためだ。
2000年前から現在に至るまで、馬頭琴は様々な名称で親しまれてきた。すべての馬頭琴に共通するのは、弦の数と形状だ。2本の弦は、数十本から数百本の馬の毛を束ねて作られる。弓も馬の毛を張って作る。馬頭琴はとても縁起のいい楽器と考えられている。馬頭琴を弾くとその家に幸せが訪れると考えられており、宴会やお祝い事の場でモンゴル民謡の伴奏のために演奏されてきた。近年では独奏曲やバンドなど、新しい編成で演奏される機会が増え、馬頭琴の可能性はますます広がっている。馬頭琴の独特の乾いた音色は郷愁を感じさせ、日本でもファンが増えているようだ。
馬頭琴の特徴は4つある。1つ目は、必ず馬の頭が先端に彫られていること。2つ目は、細い繊維の束からなる2本の弦で構成されていること。元来馬のしっぽの毛が用いられてきたが、現在ではナイロン弦を使用する場合がほとんどだ。3つ目は、外弦が低音で内弦が高音だということ。普通の弦楽器は、演奏者から見て右側の弦である内弦が低音で外弦が高音だが、馬頭琴は逆だ。4つ目は、弦の抑え方だ。普通の弦楽器では、弦を上から抑えるのが一般的だが、馬頭琴は横から弦を押す。人差し指と中指は爪
の付け根で、薬指と小指は指先で弦を押すのだ。
モンゴル帝国の時代、国家の式典や宴会などでは、開始の合図として馬頭琴が演奏されていた。このことからも、馬頭琴がモンゴルでどれほど高く評価されてきたかわかるだろう。「エルテニー・サイハン」という長唄を歌い、馬頭琴を弾いて国家のセレモニーを開会したという歴史的記述も残っている。
馬頭琴は太古の昔からモンゴルの歌や踊り、祭りのときに欠かせない楽器として活躍してきた。例えば、モンゴルの伝統的踊り「ビー・ビイェルゲー」は、馬頭琴の演奏なしに踊ることはない。
モンゴル国内で発展してきた馬頭琴を世界に発信するため、2人の人物が大きな働きをした。1人目は、有名なモンゴル人馬頭琴演奏家ジャミアンさんだ。ジャミアンさんは、馬頭琴の曲をヨーロッパの音符に移し楽譜を作り、馬頭琴の専門的な教育を初めて行った。彼の教え子たちが1930年代以降、世界中で馬頭琴を演奏したと言われる。そのとき、皮の共鳴箱が気温や湿度に影響され、音質が悪くなってしまうという問題があった。モンゴルは一年を通して湿度が低く涼しい気候だったため、革製の共鳴箱でも問題はなかったが、気候が違えばそうはいかない。馬頭琴の改良が求められた。
1962年、当時の文化省は、旧ソ連でバイオリンなどの楽器を制作していたデニス・ヤラヲイさんをモンゴルに招待した。彼は、それまで皮で作られていた共鳴箱を木で作り、現在の馬頭琴の形にした。これにより、高温多湿の地域でも美しい音色で演奏することができ、馬頭琴はさらに有名になったといわれている。
1990年以降、馬頭琴はますます発展している。現在の馬頭琴発展を支えているのは、馬頭琴楽団だ。馬頭琴楽団は1992年に活動を始めて以来、世界の3大陸30以上の国で演奏している、凡そ30人の演奏家による楽団だ。馬頭琴楽団が結成されてから、独奏や伴奏以外にも、二重奏や四重奏、五重奏、合奏などさまざまな演奏形態が生み出されている。
2008年にユネスコが馬頭琴を文化遺産に登録した。馬頭琴をさらに発展させるため、2003年に大統領が「全ての家庭が馬頭琴を持つ、さらに弾けるようになる」という目標を掲げた。
https://www.youtube.com/watch?v=Nj8paTuRA_s
https://www.youtube.com/watch?v=dQmQIvQd7vI
https://www.youtube.com/watch?v=uB-wHROKGXU
https://www.youtube.com/watch?v=Dq3BfDTzT0k
再生回数: 3900
Tweet