喉歌ホーミー
喉歌ホーミー
ホ ーミーは、遊牧民たちによって生み出された。日本ではノド歌と呼ばれるが、これはその名の通り楽器を使わず、ただ声だけで独特な曲や音を響かせることをいう。ホーミーについて知らない人がこれを聞くと、何か楽器を演奏しているのだと思うだろう。有名な民族芸術研究者バダラーさんはホーミーについて「声の芸術つまり口腔器官と関わる芸術」と定義している。ホーミーは民謡、祝福の歌、賛歌や楽器と一緒に歌われることもあり、どの分野にも上手く交わり歌えるという点で独特な芸術だ。しかし、いつ生まれたかは不明だ。遊牧民が馬群を追うときに口笛を吹く伝統から生まれたという説が一般的だ。他にも、山や谷合に吹く風、葦と竹の出す音、高くから落ちる滝の音など自然の風景を表現するときにホーミーができたかも知れないという見方もある。
ホーミーからは、鳥の鳴き声、風の音、川の流れ、滝の音、川岸の石が動く音が聞こえてくる。モンゴルの自然の美しさを感じさせる何十種類もの音だ。モンゴル人はホーミーを聞くと、西部、西北部のアルタイ山脈とタガナ山脈が頭に浮かぶ。西モンゴル、北部フブスグルの端の国民の中でホーミーが生まれたとも言われ、昔から伝統的に歌われてきた。西部ホブド県のチャンダマニ郡の全市民がホーミーを歌うと言っても過言ではない。この土地から世界的に有名になったスンドゥイ、チメドドルジさんらホーミー歌手が生まれた。
高い山や岩の谷間に吹く風、川の流れ、木の音などは自然が奏でるホーミーと言われ、そんな所に行くとモンゴル人はホーミーを歌いたくなる。モンゴル人は荷物を運ぶときや家畜を追うとき、楽器が全くなくても、喉から色々な音色を出して楽器と同じように歌うという面白い伝統を持っている。モンゴルの草原では、長唄を響かせる。馬に乗り、蹄が地面を捉えるリズムに合わせてホーミーを歌うのだ。暑い日は白い歯で歯笛を吹き、涼しくなるとくちびるで笛を吹く。馬群を追うときや、故郷の人たちを喜ばせるとき、家畜を落ち着かせるときなどにホーミーを歌う。これは遊牧民が持つ大事な文化で、祖先から子孫に受け継がれていくべき重要な伝統だ。
ホーミーには、お腹から出すハリハラー、口と舌を使うホーミー、鼻を使って音を出すナルマイホーミー、喉を閉めて歌うシャハイという4種類がある。ハリハラーホーミーは川の流れに打たれた石の音を思い起こさせ、口と舌を使うホーミーは風の吹く音と似ている。このことからも、ホーミーが自然の風景から起こった音楽だということがわかる。
ホーミーは、トゥワ国のものとモンゴルのものに分けることができる。モンゴル人以外の人がモンゴルホーミーを上手に歌えないのは、モンゴル人がホーミーを自然に発達させたためだといわれる。モンゴルホーミーの特徴とモンゴルホーミーとトゥワホーミーの違いについて簡単に説明する。
モンゴルホーミーの特徴といえば、力強い音色だ。大きい声で歌わなくても、広い範囲に響き渡る。実際に聞くと、主音以外に曲が流れているように聞こえる。モンゴル人が外国でホーミーを披露すると、人々はその素晴らしさに舌を巻く。ホーミーの分野でモンゴル人がずば抜けていることは、他国のホーミー歌手も認めている。モンゴルとトゥワ国は、それぞれ独自の方法でホーミーを発展させてきたため、お互いにかなり違っている。モンゴルのホーミーは前述したとおり強い音で力強いのが特徴だが、トゥワホーミーは音色が細く、静かだ。口と舌を使うホーミーでは、声の強さや大きさはあまり関係ない。モンゴルホーミーはたくさんの音が出せる。長唄もホーミーでできるのだ。
ホーミーは2010年に無形文化遺産としてユネスコに登録された。
https://www.youtube.com/watch?v=is9zr5BiPbU
https://www.youtube.com/watch?v=vW4WHbzMjmI
再生回数: 2985
Tweet