「シャガイハルワー」というモンゴルの伝統的なゲームについて
「シャガイハルワー」というモンゴルの伝統的なゲームについて
2014年11月、羊やヤギのくるぶしの骨をはじいて遊ぶシャガイハルワーという伝統的な遊びが、ユネスコの無形文化遺産に登録された。シャガイハルワーは13世紀ごろに起こったと言われる。初めは貴族たちが遊ぶゲームだったが、徐々に一般市民にも普及してきた。現在では、男性たちが的をめがけて骨をはじくゲームとして、広く親しまれている。
モンゴルには、相撲、競馬、弓道という３つのスポーツが有名で、男性の3大競技と呼ぶ。シャガイハルワーは、これら3大競技に並ぶ伝統的なスポーツとされている。シャガイはくるぶしの骨を意味し、ハルワーは射撃という意味だ。現在、シャガイハルワーは、民族祭りであるナーダム祭の種目の1つとなり、公式ルールもできている。
モンゴル人は昔から、余暇になると昔話や伝説を話したり、くるぶしの骨を弾いたりしていた。シャガイハルワーはその中で誕生したと言われ、現在はハルハ、ウリアンハイ、ボルジゴンという３つの流派に分かれている。公式なスポーツとされているのは、ハルハハルワーだ。「ハシラガ」と呼ばれる木製の誘導台を持ち、その上に四角く削った小さい鹿の角で作ったおはじきを置いて、5メートル離れたところに並ぶシャガイめがけて弾くのだ。角のおはじきは厚さ３～６ミリほどで、大きさは４×３センチ四方が一般的だ。
的となるシャガイは「ハサー」と呼ばれ、32個ある。ハサーとは引く、という意味だ。そのハサーを、20センチくらいの高さで10度ほど傾斜している台の上に置く。シャガイハルワーは、モンゴルの数少ないチームスポーツの１つだ。1チーム7人で競い合い、順番に3回ずつおはじきを弾く。ハサーに当たったら、並んでいる32個のシャガイから1個を獲得する。このようにして、32個のシャガイを２チームが取り合い、最終的に多くのシャガイを獲得したチームが勝利となる。1ゲームにかかる時間はおよそ80分だが、参加するチームの数によっては、3日間以上続くこともある。ナーダム祭りには、約300人の選手が参加する。モンゴル全体では、シャガイハルワーの選手は6000人以上いるという調査結果もある。昔は主に男性が遊んでいたが、今では男女問わず人気だ。
昔は、シャガイで遊ぶことを「トロイム」と言っていた。丸い、という意味だ。今トロイムと言えば、シャガイで遊ぶ場所のことを指す。現在、モンゴルで最も人気のあるトロイムは、ドルノゴビ県とトゥブ県にある。
ゲーム中は、チームリーダーの許可を得ずに休んだり、料理を食べたり、トイレへ行ったりすることはできない。また、相手のチームがおはじきを弾くとき、集中させないように「ウウハイ」という歌を歌う。わざと汚く歌い、集中力を阻害する。チームのメンバーは、集中させるよう大声で綺麗に歌う。そのため、シャガイハルワーの試合はとても賑やかだ。皆さんがシャガイハルワーの試合を見物したら、きっと耳が痛くなるだろう。シャガイハルワーをすることで、我慢強さと集中力が養われると言われている。
社会主義時代は、シャガイハルワーは仕事の邪魔、時間の無駄という理由で禁止されていた。しかし、男性たちは隠れてシャガイハルワーをしていたという。女性がいつから遊ぶようになったかは不明だが、モンゴルの最後の王様、ボグドハーンの王妃であるドングドラムさんが宮殿の中で、7人の裁縫師の女性を集めてチームを作って遊んでいたことが分かっている。これが、モンゴルで最初の女性チームだと言われている。
シャガイハルワーをすることで、空間認識能力が身につくと研究者は言う。一回の試合で40～50回立ったり座ったりを繰り返し、手の細かい感覚や視力、息の調整が求められる。これはスポーツではないという意見もあったが、専門家が科学的に検証したことで、1999年以降正式にスポーツ種目に入れられた。集中力が求められるチーム競技であるため、友情を確認するのに最適だ。
シャガイハルワーの道具に、公式なブランドはない。個人が彫刻家に材料を渡して制作を依頼しているのが現状だ。費用は材料や依頼する彫刻家により異なるが、ハシラガは10000～100000トゥグリク（日本円で620円から6200円ほど）ほど。
シャガイハルワーは国内だけでなく、海外でも多くの国で親しまれている。外国で生活しているモンゴル人の若者が、シャガイハルワーで遊んでいる。アメリカやヨーロッパの国々でシャガイハルワーの大会が毎年開催されていることからも、シャガイハルワーの知名度の高さがわかるだろう。文化遺産に登録されたことで、シャガイハルワーはモンゴルの伝統的な民族文化としてその価値をさらに高めた。将来、世界大会を主催することが期待されている。
https://www.youtube.com/watch?v=7KFqVMi7tnM
https://www.youtube.com/watch?v=ZBzpWkjy3Lo
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